『ちはやふる 上の句』が『ちはやふる 下の句』より好きな理由

 4月1日に『ちはやふる 上の句』を観て、4月30日に『ちはやふる 下の句』を観た。意識した訳ではないが、僕にとって2016年の4月は、『ちはやふる』に始まり『ちはやふる』に終わったことになる。

 本作は多くの映画ファンからも一般の中高生からも、おおむね高く評価されている。しかし、Twitterを見ていると、本作に肯定的な映画ファンの間で、『上の句』の方が好きだという層と、『下の句』の方が好きだという層、どちらも絶賛している層に分かれているように思う。これはちょっと興味深い。なぜなら、昨年公開された『ソロモンの偽証』や『進撃の巨人』に関しては、前編の方が好き(むしろ後編には否定的)という層が多かったからだ。 

 かくも意見が分かれる要因の一つは、『上の句』と『下の句』が、それぞれアプローチの異なる一本の青春映画としても成立しているからだろう。『ソロモンの偽証』や『進撃の巨人』の後編が、一本の物語映画として成立しているとは考えにくいのとは対照的である。 

 

 さて、僕はどの層かと言えば、『上の句』の方が好きだという層だ。今のところ、『上の句』は今年の日本映画のベストワンだが、『下の句』はそこまでじゃない。その主な理由は三つ挙げられる。

 

①まずは何と言っても、机くんと部長のドラマに泣かされたからだ。『上の句』は、主人公である千早を演じる広瀬すずのアイドル映画であり、身体能力が高くて若くてかわいい女子高生(つまり最強!)である広瀬すずの魅力を捉えている。しかし、核として描かれているのは、千早という台風に巻き込まれる、部長や机くんの成長物語であるように感じた。

  一人で勉強をしていれば良いと思って生きてきた机くんだが、千早に巻き込まれ、仲間と競技かるたに取り組むようになる。しかし、ある出来事により、机くんは仲間や競技かるたに疑いを持つ。そんな彼を、千早がかるたを一枚取ることで救うシーンがある。百人一首の歌とリンクさせた伏線の回収であり、説明台詞に頼らない映像による語りになっている。巧いなーと思いながら泣いた。

 そのシーンの後に、部長の素振りのシーンがある(部長について書こうとすると長くなるので割愛する)。ここも説明台詞に頼らず、素振りをするという競技かるたにおける動作で語っている。エモーショナルだーと思い、また泣いてしまった。

 やはり平凡な男の観客としては、千早よりも部長や机くんに感情移入しやすいのだろう。10代の頃の自分を少なからず投影できるからだ。彼らの成長物語が、競技かるたのアクションを通して描かれていることにグッときた。

 その点、『下の句』では部長の物語があまり描かれないし、机くんは最初から最後までただの良い奴になってしまっている。物語の焦点が千早と新、しのぶに当たっているから、それは仕方がないことだ。でも、『上の句』で感動した身としては、ちょっと寂しい。机くんがただの良い奴では、ねぇ…。

 

②『上の句』を観た時に驚いたのは、競技かるたというものの活劇性だ。もちろん、テレビで競技かるたのニュースを見たことはあるので、速くて迫力があることは知っていた。けれども、『上の句』を映画館で観た時に、その活劇性を初めて認識し、興奮を覚えた。

 そもそも、映画を面白くする大きな要素の一つが、活劇性である。リュミエール兄弟の時代から、我々はスクリーンに映るものの動きに魅了されてきた。キートンもディズニーも黒澤明スピルバーグ宮崎駿も、作品の魅力の第一は活劇性だと言えよう。本作も然りである。登場人物たちが己の身体を用いて、一瞬でかるたを取るというアクションは活劇性に満ちている。

 ところが、己の身体で素早くかるたを取るというアクションは、どうもワンパターンしか無いようだ。確かに『下の句』では、音を立てずに優雅にかるたを取るクイーン、しのぶが登場する(しのぶを演じる松岡茉優の素晴らしさ!)。音を立ててかるたを取る主人公たちとは異なる存在だ。 しかし、己の身体で素早くかるたを取るという動作自体は同じであり、一瞬のアクションであることに変わりはない。

 よって、『上の句』を観た時には活劇性への新鮮な驚きがあったが、『下の句』を観た時には無かった。ただ、『下の句』には、校庭をバックに疾走する千早を捉えたロングショットがあり、あれは活劇的で最高だった。

 

③『上の句』では、少年ジャンプ的な直球のバトルが描かれ、分かりやすく爽やかな青春映画になっている。対して『下の句』は、直線的ではない物語構成になっているようで、ほろ苦さも感じられる青春映画である。

 ならば、『下の句』のクライマックスで、「仲間」という少年ジャンプ的な台詞を連呼するのは、演出としていかがなものだろうか。そこが妙に気になってしまった。分かりやすい『上の句』でやるならともかく、『下の句』はそうじゃないだろうと思うのだ。何か百人一首の歌を絡めた、映画的な語りがされていれば、逆転ホームランで『下の句』の方が好きになったかもしれないのに…。

 

 以上の理由により、僕は『ちはやふる 上の句』が『ちはやふる 下の句』より好きだ。とはいえ、『下の句』も楽しめたし、続編にも期待したい。原作もすごく評価が高いので、いつか読んでみたい。

独身モスラ、ブログはじめるってよ

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 社会人の3年目になり、25歳になった。何歳まで生きることになるかは分からないけれど、仮に75歳まで生きるとすれば、人生の三分の一が終わったことなる。人生の短さをいよいよ感じるようになった今日この頃。ぐはあ。

 

 でも、生きていると嬉しいことや楽しいことがいっぱいあるけど、悲しいことや辛いことも沢山ある訳だから、不老不死じゃなくて良かった。

 

 うーん、何か文系の中学2年生が書きそうな出だしになってしまった・・・。

 

 ともあれ、ブログを始めてみようと思う。悲しい時や辛い時に寄り添ってくれる、映画や音楽、本、ドラマの感想などを書いていきたい。まあ、週に1回くらいの頻度になるとは思うし、すぐに飽きて放置するかもしれないけど。

 

 最近よく聴いている曲。

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それにしても、今年のゴールデンウィークシネコンで公開される映画の充実っぷりったら!もう今年のベストテンが選べそうな勢い。近いうちに、『ちはやふる』の感想でも書きたい。

 

ではでは。